「撮らなきゃマズイ!」苦笑される日本報道陣~メディアのモラルを考える

2014/03/11矢萩邦彦

「日本のメディアはマナーが悪い」ロンドンパリンピックの時に各所で聞かれた感想でした。そして、ロンドンを取材する中で一部ではありますが、そう言われても仕方のないメディア関係者を目の当たりにしました。

今回のソチでも聖火ランナーを務めた佐藤真海選手の取材に当たって、さっそく日本メディアの問題点が浮き彫りになるようなシーンに遭遇しました。2020年を少しでも良いものにするための切っ掛け作りの一つとして、問題提議をしたいと思います。

「あんなので撮れるわけないだろ!」

聖火リレー本番直前、もともと佐藤選手が聖火を受け渡すはずだったポイントが事前連絡と異なったことで佐藤選手のフィニッシュを押さえようと構えていた日本の報道陣はちょっとしたパニック状態になりました。佐藤選手を追いかけて群れになった日本の報道陣が沿道の観客を押しのけて走る姿は、他国の報道陣や観客から失笑を買ってしまいました。

現場にいたジャーナリストは「ランナーでもオーディエンスでもなく、完全にフォトグラファー優先の雰囲気になっていました。あるフォトグラファーなど沿道の子供にぶつかってまで写真を撮ろうとしていました。“あんなので撮れるわけないだろ!”って叫んでいた人も居ましたね」と憤り、また別のフォトグラファーは「僕もやっちゃったけど、良くないよね」「一応“すみません”的なことを言っていたけど、観客にのしかかっていた人も居て、指さされて笑われていた。自分もその中に居たから、主役は僕たちじゃないと自戒します」と話してくれました。

そもそも人数が多い日本メディア

日本でのパラリンピックの報道を見ていると驚かれる方も多いかと思いますが、日本のメディアはおそらく開催国の次に人数が多いのではないか、というほど沢山来ています。ロンドンの時はEU全体と同じくらいの人数で、開会式と閉会式は大手メディア以外はアクレディテーションを持っていてもクジ引きでチケットをシェアしたくらいです。

ソチでも日本メディアの多さは群を抜いていて、アクレディテーションを受けているフォトグラファーのための説明会「フォトブリーフィング」はロシア語・英語・日本語の三か国の通訳で開催されました。全体的には謙虚でルールを守っているメディア関係者も沢山いるのですが、もともと数の多い中の一部にマナーの悪い人がいることで、日本のメディア全体の評判に影響している可能性もあります。

また「なんで日本のメディアは次々に同じ質問をするのか?」ということも良く聞かれましたが、確かに同じ質問は多く、佐藤選手の取材でも「同じことが言えるか分かりませんが…」と戸惑うシーンもありました。シェアする感覚のなさが、色々な意味で歪みを生じさせているような気がします。

自分が撮らなきゃいけない空気

どうしても撮らなければいけない雰囲気がある、とメディアに関わるフォトグラファー達は口を揃えて言います。会社から指示されたような絵が撮れないとマズイ、売れる絵を撮らなければ仕事がなくなる、という強迫観念のようなものがあるようです。

日本人はよく空気を読む国民性と評されますが、国際大会の現場では、自分たちの小さなコミュニティーの空気に縛られて、全体に溶け込めていない印象があります。また「自分はまだ若手なので、パラリンピックに回されただけです」というようなモチベーションの低いジャーナリストにも問題があるように思います。

「綺麗事ではなく結果がすべて」という意見もありますが、そこには偏差値教育的な歪みを感じます。パラリンピックのような場こそもっとプロセスを重視するべきなのでは、と感じます。

「出場するすべての選手たちの全力を出し切る姿が世界中の人 たちの心に届くことを願っています」と語った佐藤選手、メディアも全力で応えることで、情報の質も伝わり方も変わってくるのではないでしょうか。

こういう現場でマナーを守らない人がいると大迷惑になります

(2014年3月 Yahoo!個人掲載)

矢萩邦彦(Kunihiko YAHAGI)

教育・アート・ジャーナリズムの現場で活動し、一つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を目指す日本初のアルスコンビネーター(命名は松岡正剛)。予備校でレギュラー授業を持ちながら、全国で江戸的私塾『鏡明塾』を展開、分野にとらわれない現代版陽明学を実践している。学校機関でも特別講師として平和学・社会学・教育学など講演。また教育コンサルタントとして学生や保護者へのアドバイスに留まらず、講師研修・企業研修等も手がけている。代表取締役を務める株式会社スタディオアフタモードではジャーナリスト育成や大学との共同研究に従事、ロンドンパラリンピックには公式記者として派遣された。

パラリンピック2014

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