「同じことは二度と起こしたくない」高校生・東北スタディツアー参加報告 林冴香

2016/11/06林冴香(埼玉県)

実際に足を運ぶまで、『被災地』という言葉からもっと薄暗い場所をイメージしていました。常にどこか重苦しい空気が漂うような、寂しいところにおもえたのです。ところが私が目にした東北の風景は、そんな勝手な想像を塗り替えました。

最初に立ち降りた沿岸部は、確かに何もありませんでした。瓦礫はすでに撤去され、草花が伸び放題になっています。もう何十年もこの自然が続いているようで、津波が来たとはとても思えないほど穏やかなところです。

しかし、ところどころに残る折れたガードレールや崩れかけた家々が、お構いなしに私に現実を見せました。ここで確かに災害が起きたのだと実感させられました。

そんなだだっ広い景色の中に、一目で新築だとわかる家が一軒建っています。それが上野さんのお宅です。上野さんは津波でご両親とお子さんを二人亡くされました。今はもう解体した自宅のすぐ隣に建てた家で、震災後に行き違いで生まれてきた娘の倖吏生ちゃんと奥さんと暮らしています。

上野さんのことは事前にいただいた冊子で読んで知っていました。しかし、いざ会って話を聞いてみると文面だけはわからなかった表情や仕草、その人の持つ空気感までも感じました。自分を削りながら家族を思って生きている感じがしました。上野さんが「悲しい震災のことは忘れてもいい。ただ教訓には生かしてほしい。」と言っていました。テレビでは忘れないでほしいという声をよく聞くので意外でした。

私は最終的に教訓がみんなに根付くまで忘れるべきではないと思います。恐怖を知らずに平和に暮らしながら危機意識を高めるのは難しいからです。しかし震災の実情を知り被災された方々の思いを聞くと、同じことは二度と起こしたくないと強く思います。知ることは意識につながります。

米崎小学校仮設住宅では、安田さんの紹介で一人暮らしのおばあちゃんにお話をきけました。名前はふっちゃんです。とても優しく明るくよく笑う人でした。なので余計に「から元気よ」という言葉が出たときドキッとしました。きっとみんなどこかにぽっかり空いた穴を抱えながら少しずつでも先へ進んでいるのだと思います。

悲しい部分が目にとまる一方で、被災地には深い人間関係がありました。もちろん人との関わりは悩みのもとで良いことばかりではありません。それでも仮設住宅にある老若男女境のないつながりは、私が経験したことない光景でした。

この三日間でこれまで考えもしなかったこと、見たことのなかったものに沢山気づくことができました。多くの人が震災を理解し、自然と減災につなげていくことが私たちにできる復興支援のひとつでもあるのです。

高校生東北レポート2016

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