「自分、そして大切な人たちの身を守れるようになってほしい」高校生・東北スタディツアー参加報告 酒井詩桜

2016/11/06酒井詩桜(神奈川県)

「100%戻るとは思っていない。そんなに焦らずに、それでも少しずつ、ゆっくりと、戻っていけばいい」私が「震災後そのままの家や商店が多いこと、人が少ないことに驚いた」と言ったときに、南相馬に住む上野さんが返してくださった言葉です。

私はすごく衝撃的な言葉だと感じました。私は勝手に、皆が、一刻も早く元通りの町になることを願っているものだと思い込んでいました。それから何より、「100%戻るとは思っていない」という言葉に驚きました。「100%、元の町の姿には戻らない、そう思うのならどうして、ここに暮らし続けているのだろう」そう思いました。スタディツアー初日の出来事です。

三日間、様々な人からお話を聞かせていただく中で、日常生活にお邪魔させていただきふれあう中で、その思い込みと疑問の答えが、一部かもしれませんが、分かったような気がしました。私が普段見ているテレビのニュース等では「被災地の被災者」と表現されていますが、その人たちが何か特別だというわけではありません。また、「被災地の被災者」だとまとめられてしまっていますが、想いは一人ひとり違います。たくさんの人と出会う中で、そのことを強く実感しました。

けれど今回、出会った人たちには共通している想いが二つ、あると思いました。これは私がそう感じただけであって、それとは違う想いを持つ方もいらっしゃるかもしれないし、私が完全にその想いを共有出来るわけではないと思っていますが、私が受け取ったことを書きたいと思います。

まず一つ目は「ふるさとを大切に想っている」ということです。私は正直なところ、自分自身のふるさとにあまり愛着を感じません。もちろん、住み慣れていて落ち着くし、好きな場所ではありますが、もしも自分のふるさとに何かあったら離れてしまうと思っていました。だから、震災後もふるさとに住み続け、ふるさとを大切に想う人たちのことが少し不思議でした。

しかし、ふるさとに住み続ける方々のお話を聞かせていただく中で、その理由が少し分かった気がしました。ふるさとの土地、それ自体を大切にしているという気持ちもあると思います。それ以上に、ふるさとの中にある思い出を大切にしているから、ふるさとに住み続けているのだろうな、と感じました。

ふるさとから離れた人たちが、自分の故郷を想っていないというわけではありません。たくさんの方がおっしゃっていたように、それは一人ひとりの状況によっても変わるものですし、一人ひとりの選択です。ふるさとに住み続けることで故郷を想う人もいれば、離れたところからでもふるさとを想い、支援する人もいます。

どちらが正しいとかではないと、私は思います。その選択の中で、ふるさとに住み続けることを選んだ人たち。「さがしている人がいるから」「この景色が好きだから」「ずっとここで暮らしてきたから」理由は様々です。その様々な中にも、共通することがあるような気がしました。

「ふるさとってなんだろう」今までは、「生まれ育った場所」そのぐらいに思っていました。しかし、その「生まれ育った場所」には、思い出が詰まっているはずです。ふるさとは、それぞれがそれぞれの大切な人と、大切な時間を過ごした思い出の場所でもあるのです。

大切な人を亡くされた方や、大切な人との思い出のものや場所が流されてしまった方は少なくありません。震災の影響で、大切な人と離れ離れにならざるを得なかった方も多くいらっしゃいます。そんな方々の中には、ふるさとそのものが大切な人との思い出であったり、大切な人のことを祈る場所がふるさとであったりするから、ふるさとに住み続けている人もいらっしゃるのだと思います。

また、自分がふるさとに残ることで、震災の影響で離れ離れになってしまった人たちが、少しずつ戻ってくるかもしれないと思い、住み続ける人もいらっしゃるのだと思います。ただ「生まれ育った場所」なだけではなく、大切な人たちとつながりを築いてきた場所がふるさとなのだと思います。

もう一つ、今回のスタディツアーで出会った方々のお話や想いに、共通することがあるあると感じました。それは、「被災しないでほしい」ということです。「災害がこれ以上起こらなければ良い」という願いの意味ではなく、「自分、そして大切な人たちの身を守れるようになってほしい」ということです。

上野さん、防災士の佐藤さんは、「防災をすることが、東日本大震災で亡くなった方々を悼むことになると思う」「震災を教訓にしてほしい」と語ってくださいました。今までは「防災・減災」と聞いても、「いつかやれば大丈夫」「そもそも自分に出来ることはほとんど無いだろう」と思っていました。

語り部の釘子さんは「自分の避難所が本当に安全か、考えたことありますか?」と問いかけてくださいました。調べて考えるだけなら、私にもすぐに出来ます。家での防災も、防災用品を自分のお金で全て揃えることは難しくても、その必要性を親に訴えることは出来ます。「自分には無理っぽいから今は何もしない」では、今日襲ってくる災害には間に合いません。何か出来ることがあるはずです。

私は、大切な人たちに、「私はあなたのことが大切です。だから、あなたはあなた自身の身を守ってね」と伝えることが、防災につながるのではないかなと思います。災害があっても、「あの人はきっと大丈夫。自分の身を守れたはず」という確信を、お互いが持てるようになることが防災だと思います。何があっても、ふるさとでまた会えるように、今回学ばせていただいたことを、自分なりにしっかりと伝えていきます。

高校生東北レポート2016

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