「人間はあくまでも自然の中の一構成者」高校生・東北スタディツアー参加報告 正出七瀬

2016/11/06正出七瀬(広島県)

一日目

仙台七夕まつりを二日後に控え、七夕飾りで彩られる仙台駅で新幹線から降り、バスに乗りました。大勢の人でにぎわう市街地から、少し行くと、どこまでも続く田園風景が広がりました。高速道路をはしりながら「実質石高百万石といわれた仙台藩」と感動していましたが、目の前はだんだん真緑の田んぼから荒野にかわります。

二時間後、到着したのは福島県南相馬市小高区です。この場所は今年七月に避難指示が解除されたばかりで、「除染中」というのぼりをたて、除染作業をしておられる方もいました。人影はほとんどなく、立ち並ぶ荒廃した家からは五年半という時間の長さを感じましたが、折れ曲がったままのガードレールは時間が止まっているようでした。

そんな中、草はぐんぐんのび、海は静かに波打っていました。震災前、この場所に何があったのか全く分からなくなってしまった沿岸部には草原が広がり、多くの鳥や虫が飛んでいました。そこでふと、荒らしているのは自然ではなく私たちなのではないかと思いました。目の前の光景は「荒野」ではなく「自然」の姿。利便性と引き換えに自然を「奪っているのだ」と突き付けられた気がしました。

次にお邪魔したのは同市の上野敬幸さんのお宅です。周りに家一軒ない場所に建つ、新築のきれいなお家でした。なぜ、津波が来た場所にもう一度住もうと思ったのか、上野さんは「もう一度津波が来て、家が流されても、家族さえ助ければいい。父が家を建てたこの場所に、家族のもとに戻ってきたかった」と話してくださいました。

「笑顔がなくなった場所に少しでも笑顔を戻したい」と家族を思い、地元を思い、復興、復旧に向かっている歩みに力強さを感じました。防災については「『まさか』という言葉をたくさん聞いた。『まさか』で亡くなった二万人の命を教訓にしてほしい。追悼したいなら避難さしてくれればいい」とおっしゃいました。

二日目

追分温泉を後にして、最初に向かったのは宮城県石巻市にある釣石神社です。この地区では、東日本大震災の津波で76軒の住宅のうち73軒が流され49人が犠牲になりました。

地震に耐えた大きな釣石と、津波で流され今年再建されたばかりの祈祷殿と社務所、高さ約10メートルの位置にある津波到達地点を示す青いライン。震災の記憶を未来に伝える神社です。

次に向かったのは、70人以上の児童が亡くなった大川小学校です。震災遺構として保存が決まったこの小学校にある壁画に残る「未来を拓く」という言葉。あの日亡くなったのは私と同世代の子供たちです。奪われた命の数だけ子供たちの未来と夢があったことを私たちは忘れてはいけないと思いました。

陸前高田未来商店街でお昼ご飯を頂いたあと米崎小学校仮設住宅にお邪魔しました。かき氷を作って、仮設住宅にお住いの方々や、部活終わりの小中学生とお話をしながら食べました。

その後、集会所で防災士の佐藤一男さんにお話を伺いました。震災後、避難所運営をされ、現在は仮設住宅の自治会長をなさっています。震災直後、誰もが大変な時に自分より周りを考えて動けたのはなぜかという質問に、佐藤さんは「ちょっと、いい人になってみようと思った」とおっしゃいました。「かなりいい人でなければできない」と思いました。

三日目

語り部ガイドくぎこ屋さんに案内してもらい、陸前高田市の市街地を見学しました。沿岸部はかさ上げ工事が行われており、震災前の生活の様子を想像することも難しい一方で、消防防災センターをはじめ多くの施設や民家が山の上に新築、移転していました。

8月6日8時15分、広島原爆の日に全国の高校生と、東日本大震災の慰霊碑に向かって黙とうをしました。

佐々木学さんの船に乗せてもらい、牡蠣いかだ、新しく造られている防潮堤、奇跡の一本松を見せていただきました。「かさ上げによって山が削られることで、山からの海への養分が減るかもしれない」と心配されながら「牡蠣といえば広島なので、こっちはブランド化していきたい」と話されて、様々な工夫を教えてくださいました。

終わりに

このたびのツアーで感じたのは、人間はあくまでも自然の中の一構成者にすぎぬということです。科学技術の進歩により私たちは快適な生活を手に入れましたが、同時に自然を畏れることを忘れてしまいました。本当に畏れているならば「想定外」なんて報道されません。人間の「想定内」なわけがない。

次なる災害に備え、新たな技術を模索することは必要ですが自然をどうにかしてやろうとか、この技術は絶対的に安全だというのは私たちの思い上がりにすぎません。科学技術の進歩と比例した環境倫理こそ今の私たちに最も必要な防災スキルではないでしょうか。

被災地の皆さま、安田菜津紀様、オリンパス様をはじめ多くの方々にお会いして、今しか残せない記憶があることを知りました。心よりお礼申し上げます。皆さまに教えていただいたことを風化させず伝えていきたいと、心に強く思っています。

高校生東北レポート2016

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