(C) 渕上あゆみ(長崎県)

「本当のスタディツアーの意味」高校生・東北スタディツアー参加報告 渕上あゆみ

2017/11/03

自分が以前別のスタディツアーに参加し、そこで学んだことを友達に話したが興味を持ってもらうことが出来ずとても悔しい思いをした。そんな時このスタディツアーのことを知り、「伝える」を学ぶために参加することにした。

他のメンバーの参加理由は震災に何かしら関わった理由だったが私は違った。参加メンバーの中で最も東北から離れており、東日本大震災と言われるとテレビ画面いっぱい押し寄せている茶色の泥水、福島原発の事故のニュース。そう、私はマスメディアを通して知った情報しかもっていなかったのだ。

事前に送られてきた資料を読んで知らないことがたくさんあって非常に驚いた。また驚くと同時にこんなにも東北のことを知らない私がツアーに参加して良いのだろうか、被災地・被災者の気持ちを汲み取ることができるのだろうかと不安になった。

ツアー初日、新幹線で仙台まで移動しそれからバスに乗り福島県南相馬市に行った。私は東北に足を踏み入れたことがなかったので仙台駅が七夕祭りの飾りや人で賑わう様子を見て「復興は進んでいるな」と思った。しかしバスで移動しているとだんだんと景色が変わっていった。上手く言えないが人気がなく、元気がないような気がした。みんなは「町が眠っている」と言ったが私はそう思わなかった。「眠っている」と言うとそのうち起きてまた賑わうような気がするが、そういう兆候がないように感じた。そのままバスは海へ行き、魚釣りをしている方から話を聞いたり、津波が来た際の避難場所の看板を多数目にした。「震災が実際にここで起きたのだ」というのを肌で感じた。海に行った後、上野さんという南相馬市在住で実際に津波の被害にあった方から話を聞かせてもらう時間があった。資料で一通り読んでいて内容は同じところもあるのだが、表情、声、何より視線から感じ取られる哀情から居竦まった。しかし上野さんは最後に「東北のこと、亡くなった方のことを覚えていて欲しい訳ではない。ただ、このことから自分が同じ立場になった時にどうすれば良いか考えて欲しい」と話され驚いた。またマスメディアが伝える状況が全てではないということに気づかされた。

2日目は私も知っている大川小学校に行った。そこもまた、空気が違った。着いた瞬間崩れた校舎などから津波の恐ろしさを感じた。周りには誰かが手入れしているのであろう花々や慰霊碑があったが、校舎から津波の恐ろしさが伝わってくるので「生」を感じなかった。避難指示が悪かった、避難訓練や知識が足りなかったと言われているが私は大川小学校のニュースを見た後自分の立場に置き換えて考えたことがなかったと自己省察をしていた。そんな中友達は写真をたくさん撮っていた。その姿を見て私は「伝える」を学びに来たのに自分の頭の中で考察を重ねてしかいないと気づき慌てて写真を撮った。初心を忘れていた。

その後佐藤さんという仮設住宅に住んでいて防災士の資格を持っている方に話を伺いに行った。「伝える」という初心を頭にとめ、実際に災害にあった時のためにどうすればよいかたくさん質問をして自分のこのツアーでの目的のために実行することが出来たと思った。しかし他のメンバーが「自分の家は海抜〇mで〜」とか「自分の避難場所はお墓が近くにあって〜」など自分の立場に置き換えて質問している姿を見て自分の意識の低さを感じた。

3日目は陸前高田の七夕祭りと語り部の釘子さんの話を伺った。七夕祭りは前の2日間とはまるっきり違った。震災で家も家族も仲間も山車も失ったと聞いていた。しかし会場には祭り魂を持った岩手県内外の人々がいた。山車がすれ違う時は互いの組が上に飾っている笹をぶつけ合い、威勢のいい声をぶつけ合っていて気迫を感じた。またそうやって自分の組の山車に気合が入りながらも、他の組が山車を動かせずに困っていると声をかけ合い助けに行く。何組かに分かれていながらも一つの「動く七夕」を構成していた。今までは後で人に伝えるために「撮らなきゃ」と思っていたが、「撮りたい」に変わり夢中でシャッターを押した。

また、釘子さんの話はびっくりするものであり、自分が他人事のように感じていたことを痛感させられた。「自分の避難場所が本当に安全だと言えますか?その避難場所は水や食料などの備蓄は揃っていますか?」。はい、と言えなかった。

4日目最終日、この日はミーティングだけだったがみんなの感想や意見を話し合い、非常に刺激的だった。同じ場所、同じものを見て聞いたが感想も写真も全然違った。人によって同じものを見ても感じ方は違う、ましてや見たこともないものを人の主観で一方的に話されても興味を持てないのは普通なのではないか、とその時気づいた。「伝える」ために大切なのは確かで広く深い知識、伝えたいという強い思い、そして相手の立場に立って考えることなのではないか。そして実行。このスタディツアーで話してくださった方々はそれぞれ伝えたいことが明確だった。上野さんは教訓を忘れないで欲しい、佐藤さんは避難場所や防災の確認、釘子さんは現状と意識、そして七夕祭りは一体感を学ばせていただいた。まだまだ未熟だが成長できたと思う。そして帰ってから実行することこそ、本当のスタディツアーの意味なのだと思う。

その後、釘子さんは小さなライトや笛があると便利だと言われたのですぐに買った。地理の課題でもあったからだが、自宅付近の防災に関して調べてまとめた。「教訓」について家族や何人かだが友達に伝えた。前よりも上手く伝えることが出来たと思う。まだ決して充分ではない。けれども私に出来る範囲でやっていきたいと思う。スタディツアーで出会った人々が私に教えてくれたのと同じように。

高校生東北レポート2017

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